アルミのタップ加工|下穴径の目安とタップ折れを防ぐ現場ノウハウ
アルミ部品の設計や調達で「タップが穴の中で折れて部品ごと作り直しになった」「ねじ山がむしれて検査ではねられた」といった経験はないでしょうか。アルミは切削性が良く扱いやすい素材ですが、雌ねじを切るタップ加工に関しては鉄鋼材とは違った注意が必要です。
本コラムでは、アルミのタップ加工で起こりやすいトラブルの原因を整理したうえで、タップの種類の使い分け、下穴径の具体的な目安、設計段階でできる工夫まで、当社が日々の加工で実践しているノウハウを交えて解説します。
なぜアルミのタップ加工は難しいのか
アルミは軽くて強度もあり熱伝導性・切削性に優れることから、半導体製造装置や産業機械、自動車部品まで幅広く使われています。しかし、タップ加工では素材の「柔らかさ」と「粘り」が裏目に出ます。
切りくずが伸びて詰まる、刃先に溶着する
アルミの切りくずは連続した長いカール状になりやすく、タップの溝に絡んで詰まります。切りくずが逃げ場を失うと切削抵抗が急に上がり、これが小径タップ折損の最大の原因になります。
また加工熱でアルミが刃先に溶着する「構成刃先」も厄介です。溶着したアルミが刃の代わりにねじ山をこすってしまい、山の表面が荒れる「むしれ」や寸法のばらつきにつながります。対策としては切れ味の良いアルミ用タップの選定、油性切削油や不水溶性クーラントの活用、そして後述する下穴径の適正化が基本になります。
ねじ山そのものが弱い
アルミは母材が柔らかいため切ったねじ山の強度も鋼材ほど高くありません。ボルトの締結トルクが大きい箇所や繰り返し脱着する箇所では、ねじ山のなめ・かじりが起きやすくなります。これは加工だけでなく設計段階からの配慮が必要な部分です。
穴・タップ加工の事例一覧はこちら
タップの種類と使い分け
タップには大きく3つの種類があり、穴の形状によって適切な選択が変わります。アルミの場合、この選定を誤ると切りくずトラブルが一気に増えます。
| 種類 |
切りくずの排出方向 |
向いている穴 |
アルミでのポイント |
| スパイラルタップ |
手前(上方向)に排出 |
止まり穴 |
粘いアルミの切りくずを確実に上へ逃がせる。止まり穴の第一選択 |
| ポイントタップ |
先方(下方向)に押し出す |
通り穴 |
切りくずを前に逃がすため詰まりにくく、高速加工向き |
| 転造タップ |
切りくずが出ない |
止まり穴
通り穴とも可 |
塑性変形でねじ山を成形する。切りくず詰まりが原理的に起きず、山の強度も出やすい。 |
アルミのような延性の高い展伸材は転造タップとの相性が良く、切りくずによるタップ折れをなくしたい場合の有力な選択肢です。ただし下穴が小さすぎるとタップに過大な負荷がかかり、大きすぎると山がやせるため、切削タップ以上に下穴径の精度管理が求められます。
タップ折れを防ぐ下穴径の考え方
タップ折損対策として現場で最も効くのが、下穴径の適正化です。めねじの下穴を考えるうえで基準になるのが「ひっかかり率」(おねじとめねじのねじ山がかみ合う割合)で、ねじ下穴径を定めたJIS B 1004では次の式で計算されます。
ひっかかり率(%)=(ねじの呼び径 − 下穴径)÷(2 × 基準ねじ山高さ)× 100 ※メートルねじの基準ねじ山高さ ≒ 0.5413 × ピッチ
現場でよく使われる「下穴径=ねじの呼び径−ピッチ」という慣用値をこの式に当てはめると、ひっかかり率は約92%というかなり高めの設定になります。JIS B 1004の下穴径はひっかかり率60%以上を前提に規定されており、実務では70〜80%程度を狙って下穴を設定するのが一般的です。
ひっかかり率は一定以上に高くしてもねじの実用強度はほとんど変わらない一方、切削抵抗は率を上げるほど急激に増えていきます。つまり慣用値のままでは粘りの強いアルミに対してタップへの負荷が必要以上に大きい条件になりやすいのです。下穴をわずかに大きめに取って抵抗を逃がすほうが、品質・歩留まりともに安定します。
ひっかかり率にはおねじの実外径を用いる別の定義(JIS B 0101)もあり、計算の前提によって数値が数%変わる点には注意が必要です。本コラムの数値はJIS B 1004の定義に基づいています。
アルミ加工での下穴径の目安
| ねじサイズ |
ピッチ |
一般的な下穴径 |
アルミでの目安 |
| M2 |
0.4mm |
1.6mm |
1.70mm前後 |
| M3 |
0.5mm |
2.5mm |
2.60mm前後 |
| M4 |
0.7mm |
3.3mm |
3.40〜3.45mm |
| M5 |
0.8mm |
4.2mm |
4.35mm前後 |
| M6 |
1.0mm |
5.0mm |
5.15〜5.20mm |
| M8 |
1.25mm |
6.8mm |
6.95〜7.05mm |
| M10 |
1.5mm |
8.5mm |
8.75〜8.85mm |
※並目ねじ・切削タップの場合の目安です。転造タップは下穴が大きくなり(例:M6で約5.5mm)、止まり穴か通り穴か、要求されるねじ等級によっても最適値は変わります。実際の加工では図面要求とすり合わせのうえ決定します。
材質によっても最適値は変わる
アルミの中でも純アルミ系のA1050と、ジュラルミン系のA2017やA7075では切削時の挙動がまったく違います。柔らかく粘りの強い純アルミ系ほど構成刃先やむしれが出やすいため下穴は大きめに、比較的サクサク削れる2000系・7000系ではねじ山の確保を優先する、といった調整を当社では材質ごとに行っています。
1000系(純アルミ)の加工事例はこちら
2000系(ジュラルミン)の加工事例はこちら
7000系(超々ジュラルミン)の加工事例はこちら
設計段階でできる3つの工夫
加工側の対策と併せて、設計段階で次の点に配慮いただくと、品質とコストの両面で効いてきます。
ねじ深さは必要以上に深くしない
アルミの雌ねじの有効深さは、呼び径の1.5〜2倍あれば実用上十分な強度が得られます(例:M6なら9〜12mm)。それ以上深くしても強度はほとんど上がらず、タップ折れのリスクと加工時間だけが増えます。また止まり穴の場合、下穴はねじ深さに加えてタップの食付き部と切りくずの逃げ分の余裕が必要です。板厚ギリギリの深い止まりねじ指定は、加工難易度を大きく引き上げます。
可能なら通り穴にする
通り穴ならポイントタップで切りくずを前に逃がせるため、止まり穴に比べて格段にトラブルが減ります。機能上問題なければ通り穴での設計をおすすめします。
脱着が多い箇所はねじインサートを検討する
ヘリサートやエンザートなどのねじインサートを入れれば、雌ねじ部の強度が上がり、締結の繰り返しによるなめを防げます。ねじ山を傷めた場合もインサート交換で済むため、高価な部品ほど採用価値があります。
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アルミのタップ加工はアルミ加工コストダウンセンター.comにお任せください
アルミ加工コストダウンセンター.comを運営する株式会社岡部機械工業は、小径から大径まで幅広いサイズのタップ加工に対応し、微細なねじから大型部品のねじ加工まで一貫してお受けしています。ねじ穴が多数集中する大型部品や、高い精度が求められる加工についても、設備と測定体制を活かしてご対応いたします。
下穴径のご相談はもちろん、「通り穴への変更」や「インサート化」といったVA/VEによるコストダウンのご提案も行っています。材料の手配から機械加工、表面処理まで幅広くご対応できますので、アルミのタップ加工でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。最適な加工方法のご提案とお見積りをいたします。
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