A1100は、JIS規格で定められた純アルミニウムの一種であり、アルミニウムの純度が99.0%以上のものを指します。A1100は、建材、日用品、電気・電子部品、食品包装材など、幅広い分野で使用されています。主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
優れた成形性・加工性
展延性に富み、曲げ加工や絞り加工など、様々な塑性加工に適しています。切削加工においても比較的容易に加工できます。
良好な耐食性
自然環境下での耐食性に優れており、表面処理なしでも比較的長期間の使用が可能です。
溶接性
溶接性も良好で、様々な溶接方法に対応できます。
電気伝導性・熱伝導性
他の金属と比較して高い電気伝導性と熱伝導性を持っています。
A1100は比較的加工しやすい材料ではありますが、その軟らかさゆえに、いくつかの注意すべき点があります。ここでは、高品質な加工を実現するための重要なポイントを解説します。
①やわらかい材質のため、工具の選定が重要
A1100の最も大きな特徴はその軟らかさです。この性質が、切削工具の選定において非常に重要な要素となります。そのため、適切な工具を使用しないと以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
構成刃先の発生
軟らかい材料は、切削時に工具の刃先に凝着しやすく、これが加工面を荒らす原因となります。
バリやカエリの発生
材料が変形しやすいため、切削端部にバリやカエリが発生しやすくなります。
工具摩耗の促進
凝着や摩擦により、工具の摩耗が早まることがあります。
具体的には以下の点に注意して工具を選定する必要があります。
ポジティブ形状のすくい角を持つ工具
ポジティブ形状のすくい角を持つ工具は、切削抵抗を低減し、切りくずの排出をスムーズにする効果があります。これにより、構成刃先の発生を抑制し、良好な加工面を得やすくなります。
シャープな切れ味の工具
刃先が鈍い工具を使用すると、材料を押しつぶすように切削してしまい、バリやカエリの原因となります。高精度に研磨された、切れ味の良い工具を選定することが重要です。
DLCコーティングなどの耐溶着性に優れたコーティング
DLC(Diamond-Like Carbon)コーティングは、アルミニウムとの親和性が低く、凝着を抑制する効果があります。これにより、工具寿命の向上と加工面の改善が期待できます。
大きなチップポケットを持つ工具
軟らかいA1100の切粉は、絡みつきやすい性質があります。大きなチップポケットを持つ工具を使用することで、切粉の排出性を高め、工具への巻き付きを防ぎます。
②やわらかい材質のため、チャッキングの仕方の工夫
A1100はその軟らかさゆえに、チャッキング方法にも特別な注意が必要です。不適切なチャッキングは、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
ワークの変形
過度な締め付けは、ワークに容易に変形や歪みを引き起こします。特に薄肉のワークの場合、顕著に現れます。
打痕の発生
チャック爪の接触面に打痕が残り、製品の外観を損なうことがあります。
加工精度の低下
ワークが不安定な状態で加工を行うと、寸法精度や面粗度が悪化する原因となります。
これらの問題を避けるためには、以下の点に留意したチャッキングを行う必要があります。
低圧でのクランプ
可能な限り低い圧力でワークをクランプすることが重要です。油圧チャックなどの場合は、設定圧力を適切に調整する必要があります。
専用治具の利用
複雑な形状のワークや、変形しやすいワークの場合は、専用の治具を設計・製作し、ワーク全体を均等に支持するように工夫します。
ソフトジョーの使用
チャック爪に軟らかい材質(樹脂やアルミニウムなど)のソフトジョーを取り付けることで、ワークへの傷つきや変形を抑制できます。
広い接触面積の確保
可能な限り広い面積でワークを保持することで、面圧を分散させ、変形を防ぎます。
締め付け順序の考慮
複数のクランプ箇所がある場合は、均等に締め付けるように順序を考慮します。
今回は、A1100の切削加工について紹介いたしました。アルミ加工コストダウンセンターを運営する株式会社岡部機械工業では、国内屈指の最先端設備を揃えており、高精度な加工を実現する環境を整えているため、お客様のご要望に沿った製品づくりを実現いたします。
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